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#02 「差別化」だけではもう勝てない?
愛されるブランドの「世界観」の正体

( podcast )

2026.02.27

「ブランディングにおいて『世界観』が大事」 そう言われて久しいですが、 そもそも「世界観」とは一体何を指すのでしょうか?

単におしゃれなロゴやWebサイトを作ること? それとも、感動的なCMを流すこと?

今回は、私たちFLYDAYZがクライアントワークでも大切にしている「世界観」の定義と、 それがビジネスにどのようなインパクトをもたらすのかについて深掘りしました。

『鬼滅の刃』を例に挙げた「設定」の話から、 ハイブランドがファンを熱狂させる仕組みまで、今回もゆるりと語り合いました。


「世界観」とは、ビジュアルではなく「佇まい」である

高橋:第2回目の今回は、私たちが普段よく口にする「世界観」について話していきたいと思います。そもそも大林さんにとって「世界観」とは何を指していますか?

大林:まずは個人の話からすると、自分がありたい姿に対して、喋り方や佇まい、姿勢などを全部含めた概念的なものだと思っています。これは企業も根本は一緒です。「今から世界観を作ります」と言って急に作れるものではなく、社会や市場の中で「自分たちがどうありたいか」という姿勢をスタート地点として作り上げていくものです。

高橋:なるほど。「競合とどう差別化するか」といった相対的な視点ではなく、あくまで「自分たちがどうありたいか」という内発的なものが起点になるんですね。

大林:そうです。よくビジネスシーンでは「差別化」という言葉が使われますが、解決策として出てくるのは「価格を安くする」「露出を増やす」「見せ方を変える」といった戦術ばかりになりがちです。

でも、価格を安くすることが自分たちのスタイルなのか? と問うと、実はそうではないことも多い。本当の意味での世界観とは、他社との比較(差別化)ではなく、自分たちが世界をどう見ているかという「視点」を起点にした、独自の「区別」ができている状態だと思うんです。


『鬼滅の刃』で例える、ブランドの「存在理由」

大林:以前、セミナーで『鬼滅の刃』を例に出して話したことがあります。そもそも「鬼がいる世界」という前提(場面設定)がなければ、鬼殺隊も日輪刀を作る刀鍛冶も存在し得ないですよね。

高橋:確かに。平和な世界なら、彼らの存在理由はなくなってしまいますね。

大林:「鬼がいて人々を苦しめている世界」という設定があり、それを良くするために戦う自分たち(鬼殺隊)というアイデンティティがある。そこで初めて、鬼殺隊としての振る舞いや姿勢、コミュニケーション、世界との関わり方が決まってくるわけです。

ビジネスもこれと同じで、「自分たちはこの世界をこう見ていて、ここをもっと良くしたいから存在する」という定義が必要です。それが決まると、「俺たちはこういうことはしないよね」「こういう言い方はしないよね」というガイドラインが自然とできあがってくる。

高橋:なるほど。ガイドラインを無理やり作るのではなく、前提となる世界の設定があれば自然と導き出されると。

大林:そうなんです。その「場面設定」さえしっかりしていれば、例えばコロナ禍のような外的要因で手法が変わることはあっても、根本の「あり方」はブレません。

東日本大震災の時のエステーさんのCMもそうでしたよね。企業として「今、世界に対してどういうメッセージを発すべきか」という姿勢が明確だったからこそ、多くの人の記憶に残るコミュニケーションができたのだと思います。

大雪で立ち往生したドライバーにパンを配った山崎製パンさんの事例もそうですね。

「お腹を空かせて苦しんでいる人がいる状況をなくしたい」という世界観が、現場の行動レベルまで浸透していたからこそできた判断だと思います。

世界観とは単なるビジュアルの話ではなく、こうした行動や姿勢の積み重ねなんです。


「意思」と「愛」のないクリエイティブは届かない

高橋:世界観を定義した後の「運用」や「継続」も難しいですよね。

大林:難しいですね。例えば、Webサイトのリニューアルなどで、要件のヒアリングをしている際に、「なぜこのコピーなんですか?」と聞いた時に、担当者から「制作会社が考えたので……」という答えが返ってくることがあります。

高橋:そこに「意思」はあるのかい? と聞きたくなりますよね(笑)。もちろんプロに任せるのは良いのですが、そこに自分たちの哲学や美意識が通っていないと、結局は誰にも刺さらないものになってしまう。。

例えば、事業部ごとに制作会社や担当者が変わっても、ブランドとしての一貫性を保つためには、やはり根底に「譲れない世界観」が必要ですね。

大林:そう。世界観は目に見えないものだからこそ、現場での行動(Action)に変換されているかどうかが一番大事です。「みんなに愛を」と掲げているのに、現場の接客が雑だったら何の意味もない。組織が大きくなればなるほど、経営層の想いと現場の行動を一致させるのは難しくなりますが、そこをつなぐのが僕たちのようなデザイン会社の役割でもあります。


ハイブランドが「最強」である理由

高橋: 一貫性という意味では、ハイブランドはやっぱりすごい。デザイナーが変わっても、国や店舗が違っても、そのブランドらしい空気感やサービスが徹底されています。 ハイブランドは、デザイナーが交代する時に、そのブランドの歴史や過去のコレクションの意図を徹底的に叩き込むそうです。「なぜそのデザインが生まれたのか」という文脈(コンテキスト)をインストールした上で、新しい表現をしていく。だから、人が変わっても世界観が揺らがない。

大林: それは強いですね。単に高い商品を売っているからハイブランドなのではなく、そうした徹底した世界観の管理があるからこそ、ファンが憧れ、共感し、「その世界に参加したい」と思うようになるわけですね。

結局、世界観というのは、企業が一方的に見せるものではなく、お客さんや働くスタッフと一緒に作っていく「関係性」そのものです。

NIKEやAppleのように、機能的な価値を超えて「そのブランドが描く未来」に共鳴するからこそ、人はファンになります。私たちFLYDAYZも、ただデザインを提供するのではなく、クライアントと共に「最高の世界観」を探求し、関わる人たちの毎日を少しでも良くできるような存在でありたいですね。


まとめ

  1. 「差別化」より「視点」を持つ 他社との比較(価格・機能)で戦うのではなく、「自分たちはどんな世界でどう在るか」という独自の視点を定義することが世界観の第一歩。
  2. 設定を作る(例:鬼滅の刃の場合): 「どんな課題(鬼)がいる世界で、自分たちは何をする存在(鬼殺隊)なのか」という前提が決まれば、やるべき行動やガイドラインは自然と決まる。
  3. 世界観は「インストール」していくもの 美しいビジュアルを作るだけでなく、その思想を社員や現場に浸透させ、現場の「行動」と一致させることで初めてブランドは信頼される。